『成果をあげる秘訣を一つだけ挙げるとするならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。』
P.F.ドラッカー,経営者の条件 第5章
自らの強みを生かし成果をあげようとすれば、その強みを重要な機会に集中しなければならないことを認識する必要があります。なぜならば、一つの良い仕事をすることでさえ容易なことではないからです。人は多様な能力を持っていて、その多様性を生産的に使うには一つの仕事に集中することです。また、多くの仕事に囲まれている現実があるからこそ、集中が必要となるのです。
成果の上がらない原因
①一つの仕事に必要な時間を過小評価する
全てがうまくいくものと楽観してしまいます。しかし、新しい仕事でうまくいくことなど一つもありません。予期しないことが常に起こり、予期しないことのほとんどが愉快なことではありません。したがって、成果を上げるには時間的な余裕を持つことです。
②急ごうとする
急ごうとするために更に遅れます。成果をあげる人はゆっくりと進みます。
③同時にいくつかのことをする
手がけているどの仕事にもまとまった時間を割けないだけでなく、いずれかの一つが問題にぶつかるとで全てがストップしてしまいます。
困難な仕事をいくつも行う人たちの秘訣は、一時に一つの仕事をします。結果として、他の人よりも少ない時間しか必要としません。
一つのことに集中するには
①過去を計画的に廃棄する
生産的でなくなった活動を止めることです。過去のもたらした問題に取り組んでいる仕事が少なくありません。避けられないことですが、現在の状況は過去の意思決定とその意思決定に基づいた行動の結果です。その仕事には自らが行ったものばかりではなく、前任者が行ったものも含まれます。いわゆる後始末に時間が取られてしまいます。したがって、成果の期待できなくなった活動は廃棄していかなければなりません。
実際にあった話ですが、店舗で売り上げの集計表を記入していました。店員さんから「集計表を記入する必要はあるのですか?」と会議で質問されました。「その集計表は誰が見ているのですか?」と尋ねると「誰も見ていていません…」。次の日から集計表の記入作業がなくなったことは、言うまでもありません。
②劣後順位を決める
どの仕事が重要であり、どの仕事が重要でないかの決定が必要です。優先順位の決定は比較的容易です。
- 過去ではなく未来を選ぶ
- 問題ではなく機会に焦点を合わせる
- 横並びではなく独自性を持つ
- 無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選びます。
そして、集中して仕事が進まないのは劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定とその決定の遵守が難しいからです。つまり、
- 未来よりも過去を
- 機会より危機を
- 外部よりも内部を
- 重大なものより切迫したものを
つい、優先してしまうからです。
問題や内部のことを放っておけということではありません。自らの劣後順位第1位の仕事が、他の人にとっては優先順位第1位であることも当然あるので、配慮も必要です。トップ本来の仕事は過去の出来事に起因する問題を解決することではなく、今日とは違う明日を創造するすることなのです。
成果が上がらないのは、アイデアが不足しているからではありません。せっかくの良いアイデアを、実現するように仕事をしている組織が少ないのです。集中して仕事をするには、現在取り組んでいる仕事以外のものにコミットせずに現在の仕事を終わらせた後、あらためて状況を検討し、優先すべき次の仕事を選びます。「最も重要なことは何か?」という観点で仕事に取り組みましょう。
次回は『意思決定』についてです。