『わかっていることで最も重要なことは、仕事と働くことすなわち労働とが根本的に異なるということである。』
P.F.ドラッカー,マネジメント《上》第16章
仕事と労働は違うものだと、ドラッカーは言います。労働は働く人が仕事を行うことをいい、仕事は人が働くことによって行われるものです。そして、仕事を生産的なものにする上で必要なものと、働く人に成果をあげさせる上で必要なものは、違うものということです。
働く人が成果に満足したとしても、仕事が生産的でなければ(生産工場での生産効率が高くても売れ残りが多くて在庫が増えたり、廃棄が増えたりすること)失敗です。逆に仕事が生産的であっても、働く人が成果を上げられなければ(売れ行きが良くても生産性が悪く収益が上がらないこと)失敗です。
いずれも、長続きしないのです。
したがって、仕事の論理と労働の力学の双方に沿ってマネジメントしなければならないのです。
○仕事の論理
仕事とは、好き嫌いのような主観的なものではありません。なされるべきもので客観的なものなのです。基本的な作業を明確にし、論理的に効率的な順序に並べます。仕事は個々の作業のことではなく、プロセスのことです。なのでそのプロセスを管理することで成果を上げられるようにするのです。
知識労働者は、工場で製品を製造するわけではありません。知識労働者のアウトプットは他者へのインプットです。つまり、他者への貢献です。知識労働は目に見えません。つまり、進行に従って管理することができません。よって第三者が設計することができないので、自身で設計しなければならないのです。
○働くこと(労働)の側面
労働は働く人自身の活動です。人の活動は論理的ではありません。いくつかの側面があり、生産的な仕事を行うためにはいずれの側面でも考慮する必要があります。
・生理的な側面
人は機械のようには働くことはできません。機械は一つの単純なことだけを反復して行う時、最もよく仕事ができます。スピードとリズムの変化が少なく、動かす部分が少ないほどよく仕事ができます。
一方、人は一つの動作しかしないと疲労します。乳酸が溜まり、生理的に疲労します。人はスピードとリズムを変えながら仕事をした方が良く働けます。いい換えると、自ら仕事のスピードとリズムを変えることが、必要となるということです。仕事のスピードやリズム、持続力を強要されることは人を疲れさせ、イラつかせるということになるのです。
次回以降、②心理的な側面③社会的な側面④経済的な側面⑤政治的な側面⑥分配に関わる側面、について書かせていただきます。