『事業の定義があって初めて、目標を設定し、戦略を発展させ、資源を集中し、活動を開始することができる。』

P.F.ドラッカー,マネジメント【上】第7章
代表取締役 瀧野 雅一

 事業の定義が明確に理解されないかぎり、どんな企業でも成り行きに任せて経営をすることになってしまいます。事業の目的やミッションについての明確な定義が現実的な目標を可能にします。

 「何を行い、何を行わないか。」、「何を続け、何をやめるか。」、「いかなる製品、市場、技術を追求し、いかなる製品、市場、技術を無視するか。」などのリスクを伴う決定を、従業員一人ひとりが行うことが可能になるのです。

○「われわれの事業は何か?」

 事業を定義するにはまず、「われわれの事業は何か?」を問う必要があります。

 自らの事業を定義することは、簡単でわかりきったことのように思われます。鉄鋼メーカーは鉄を作り、鉄道会社は乗客を運び、保険会社は保険を引き受け、銀行はお金を貸します。

 しかし、それでは「われわれの事業は何か?」との問いに答えたことにはなりません。

 例えば、『お子様を大切に預かります。』という保育園と、『社会に貢献できる人を育てます。』という保育園では、子どもたちの過ごし方が違うでしょう。

 一人で事業を行うのであれば、「わたしの事業は何か?」を問う必要がありません。新しい洗剤を開発しても、一人で売っている限りにおいて問題になるのは製品の効能だけです。

 しかし、それが大量に売るようになり、製造と販売に人を雇い、販売方法を考えるようになると、「われわれの事業は何か?」を考えなくてはならなくなるのです。

○「われわれの事業は何になるか?」

 事業がうまくいっている時にこそ、次に問わなければならないのが「われわれの事業は何になるか?」という問いになります。成功は新しい現実をつくり出すとともに、新しい問題をつくり出します。そして常に陳腐化していきます。

 自らイノベーションを行い、自社の製品やサービスを自ら陳腐化する必要があるのです。そうしなければ、他社の製品やサービスにより陳腐化されてしまうのです。

○「われわれの事業は何であるべきか?」

 「われわれの事業は何になるか?」との問いは、予測される変化に適応するための問いです。

 そして、「われわれの事業は何であるべきか?」を問うことにより、理想的な製品やサービスを生み出し、社会で実現したいことを明確にするのです。

 事業を定義することは簡単なことではありません。しかし、事業を定義することで優先順位や事業計画を策定することが可能となります。そして、業績を上げるべくマネジメントをすることができるのです。

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