『組織は目的ではなく、手段である。企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客の創造である。』

P.F.ドラッカー,チェンジリーダーの条件Part2 第1章•第2章
代表取締役 瀧野 雅一

 企業も公的機関も社会の機関、つまり、組織は社会の道具です。道具には役割があります。ドリルは穴を空けること、ハサミは切るという役割があります。役割の果たせない道具は使い物になりません。
 企業は存続すること自体が目的ではなく、役割を果たし、社会や地域や個人のニーズを満たすために存在します。それらの中核となる機関がマネジメントです。したがって、私たちはマネジメントを役割によって、定義しなければなりません。

○マネジメントの果たすべき役割
①組織の使命を果たす

 マネジメントは、その企業が使命を果たすために存在します。それは、経済的な成果をあげるということです。経済的な成果を生むことができなければ、失敗です。消費者が欲する財とサービスを自らが進んで支払う価格で供給できなければ、どんなに素晴らしいと思っていても、失敗と言わざるをえないのです。

②働く人を活かす

 マネジメントは仕事を生産的なものにし、働く人を活かす役割があります。企業において真の経営資源は人財です。企業が成果をあげるのは、人的資源の生産性をあげることによります。そしてそれは仕事を通じてです。したがって、仕事を生産的なものにすることは、マネジメントの基本的な役割です。働く人にとっては生計の資を得、社会的な地位を得ます。そして、自己実現と生きがいを得るための手段になります。働く人を活かすということは、特に重要な意味を持つのです。

③社会的責任を果たす

 マネジメントには、自らの企業が社会に及ぼす影響を処理するとともに、社会の抱える問題に貢献するという役割があります。企業は人に仕事を与え、株主に配当を与えるためだけに存在するのではありません。社会に財とサービスを供給するために、存在します。企業はその使命を果たすため、すなわち経済的な財やサービスを生産するためには個々の人間や地域社会に対し、何らかの影響を与えざるをえません。それは最終的には、廃棄物として現れたりします。車を走らせれば排気ガスが出ます。したがって、廃棄物や排気ガスなどを減らす努力や工夫をしなければならないのです。

○企業の目的

 企業とは何かと聞くと、「営利が目的」と多くの人が答えます。しかし、この答えは間違っているだけではなく、的外れです。利益追求とは「安く買って、高く売る」ということの言い換えに過ぎません。それは企業の活動を説明するものでもなく、企業のあり方を説明するものでもありません。企業の目的をドラッカーは『顧客を創造すること』と、いいます。買わないことを選択できる第三者が、喜んで自らの購買力と交換してくれることにより、市場が生まれます。市場は自然にできる訳ではなく、企業がつくり出すものです。

 顧客が価値を認め、購入するのは製品そのものではありません。ドリルを買う人は穴を空けることのために買うのであって、ドリルそのものが欲しいわけではないのです。

 企業の目的が顧客を創造することであるために、企業には基本的な機能が2つあります。それが、マーケティングとイノベーションです。成果を生むのはマーケティングとイノベーションだけなのです。