『マネジメント教育は、企業と社会が必要とするだけではない。マネジメントの人間一人ひとりが必要とする。彼ら自身が生き生きと活動するために必要とする。常に挑戦していくために必要とする。明日成果を上げるには、今日のうちに必要なスキルを身につけておかなければならない。』

P.F.ドラッカー,マネジメント〈中〉 第33章
代表取締役 瀧野 雅一

 企業の経営環境は日に日に複雑化しています。技術の変化だけではありません。顧客・取引先・従業員・法的規制など多様な関係を築いていかなければなりません。グローバル化しなければならなかったり、環境問題や社会問題もあります。これらもマネジメントの手腕にかかっていると言っても過言ではないのです。

マネジメント教育の注意点
  • マネジメント教育とは、セミナーに参加することではありません。セミナーは一つのツールに過ぎません。学んだことや考えたことを直ちに利用できなければ、せっかくのマネジメント・コースも意味がないのです。情報を手に入れただけで、知識とはなりません。金曜日に学んだことを翌週の月曜日に活用できなければ、教育を受けたことにはならないのです。特に経験の少ない若手のためのトップマネジメント・コースは、セミナー代だけがトップ・マネジメント向きなので、注意が必要です。
  • マネジメント教育は、エリート育成のものではありません。最悪なのはエリートを育成しようとし、他の社員を放っておくことです。仮にエリートの育成にうまくいったとしても、エリート社員の考えたことを実行するのは放っておかれた社員たちなのです。しかも彼らは軽んじられてきたことを知っているので、生産性は低く、成果は上がらないのです。選ばれたエリートの半分は、40代にもなると口がうまかっただけだったことが明らかになってくるのです。
  • マネジメント教育は、人の性格を変えさせるためのものではありません。成果・業績を上げさせるものです。人の考えたものではなく、自らの考え方によって存分に活動できるようにするためのものです。雇用関係は特定の成果を要求する契約にすぎません。
マネージャーに必要な能力

 マネジメント教育を実り豊かにするにはどうすれば良いでしょう? それには会社や上司が積極的に参加しなければなりません。中小企業では実績を上げた営業担当者をマネージャーにすることもあります。しかしそのような人は駆け引きに長けているに過ぎないかもしれません。

 マネージャーには①共感する能力、②他人の仕事の仕方を理解する能力、③個性などの非合理な要因に対する感覚、が必要となるのです。