『企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客の創造である。』

P.F.ドラッカー,マネジメント【上】第6章
代表取締役 瀧野 雅一

 市場をつくるのは企業です。逆に企業が何であるかを決めるのが顧客です。マネジメントとは市場を見つけるだけでなく、自ら市場を創造するものなのです。

 企業は営利法人、つまり利益を追求することを目的としていると思われがちですが、そうではありません。ドラッカーは、利益は企業や企業活動にとって、目的ではなく『存続の条件』と言います。

 企業活動において企業に成果をもたらすものが、マーケティングとイノベーションです。それ以外の活動はコストです。コストを下げるには、成果に結びついていない活動を見つけ止めることです。

○マーケティング

 マーケティングは顧客の現実、顧客のニーズ、顧客の価値からスタートしなければなりません。「何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問わなければなりません。マーケティングでは「私たちの製品(サービス)にできることは○○です」ではいけないのです。

○マーケティングに必要な問い

「私たちの顧客は誰か?」「私たちの顧客は誰と誰か?」「顧客にとっての価値は何か?」「商品(サービス)は顧客のニーズにマッチしているか?」「私たちの顧客は変化したか?」(年齢層・家庭環境・コロナ禍など)「顧客を増やすか、減らすか?」、「それはなぜか?」「顧客の満足度を知る手立てはあるか?」「パートナーは必要か?」

 確かに何らかの販売は必要です。しかしマーケティングの理想は販売を不要にすることです。理想はすぐにでも買いたくなるように、顧客を理解し、製品やサービスを顧客に合わせるのです。三井呉服店(現在の三越)は『現金安売り、掛け値なし』で有名ですが、それまで常識だった訪問販売やツケ払いを店頭で支払いは現金のみとし、定価販売(値引きなし)することで顧客に安価で提供し、大きな業績をあげました。

○イノベーション

 しかし、マーケティングだけでは企業としての成功はありません。新しい満足を生み出すイノベーションすることです。より経済的な製品やサービスを供給しなければなりません。そして常により良いものになっていかなければならないのです。

 イノベーションの成功例としては、クロネコヤマトのゴルフ宅急便やクール宅急便などです。新しい欲求の満足をもたらす財とサービスの創造です。そのようなサービス(製品)の価格はかえって高くなります。しかし全体としての効果ははるかに経済的となるのです。

 したがって、企業をマネジメントするということは適応的な仕事ではなく、創造的な活動です。可能なものではなく、理想を追求できるように目標を設定しなければならないのです。