『組織の構造を論ずるにあたっては、いかなる構造の組織が必要かという問題
と、いかにして組織を作るかという問題の双方を問う必要がある。いずれの問いも重要である。この二つの問いに体系的に答えることができたとき、健全で効果的で耐久力のある組織をつくることができる。』

P.F.ドラッカー,現代の経営【下】第16章
代表取締役 瀧野 雅一

 高速道路を建設するとき、どこからどこまでを作るべきかを考える人に対し、桁橋式と吊橋式の利点と限界について論じようとする人もいます。どちらも道路建設の問題です。

 どちらも重要で、それぞれ十分な検討をしなければなりませんが、どこからどこまで道路を建設するべきかという問いに対し、高架道路のタイプ別強度について議論すれば混乱が生じます。議論を始めるには、どんな組織が必要かを予め明らかにしなくてはいけません。

 会社は、それ自体が目的ではありません。事業の活動と事業の成果という目的のための手段です。事業の目的を達成するためには、どんな組織構造が必要かを知る必要があるのです。

◯活動を分析する

 事業の目標を達成するためにどんな活動が必要か、その中でも重要な活動は何かを明らかにすることで、組織を構築することができるのです。洋服メーカーは縫製、販売等の活動がありますが、デザインこそ重要な機能です。パルプ工場であれば長期的な森林管理、ケーブルテレビでは資本調達などです。

◯意思決定を分析する

 事業が成長の足固めに失敗し、倒産はしないまでも縮小していく最大の原因は、社長が行うべきでない意思決定をいつまでも社長自らが行っているからです。

 事業の目標を達成するために、どんな意思決定が必要か。それらはどんな種類の意思決定か。どのレベルでなされるべきか。意思決定に参画するのは誰にするか、少なくとも、事前に相談されなければならないか。など、意思決定に関わる権限と責任を正しく位置付けをしなければなりません。

 事業上の意思決定を分類するには、いくつかの基準に沿って行うと良いでしょう。

・意思決定を分類する基準
1 意思決定の息の長さ

 その意思決定は、どのくらいの期間にわたって企業の行動を拘束することになるのか。どのくらい早く変更することができるのか。

2  意思決定が、他の部門や事業全体に与える影響の大きさ

 その意思決定がある部門にしか影響しないのであれば、低い階層での意思決定ができます。部分最適にならないよう注意が必要です。

3  意思決定が反復して起こるか、稀にしか起こらないか

 反復して起こる問題は原則を決めておくことで、マネジメントの低い階層に任せることが可能となります。

 これらの分析は、中小企業であれば数枚の紙と数時間があればできることです。分析を怠ったり、いい加減であったりしてはいけません。なぜならば、これらの分析をすることで、機能する組織をつくり上げることができるからです。