『成長は自動的には起こらない。事業の成功によって自動的にもたらせるものではない。』

P.F.ドラッカー,マネジメント【下】第60章
代表取締役 瀧野 雅一

 企業を成長させるためには、準備が必要です。

 成長のための機会がいつ訪れるかは、予測できるわけではありませんが、準備はしておくことはできます。準備ができていないと、せっかく訪れた機会を逃してしまいます。

○ 成長の準備

 そこで働く人の多くが、より大きな責任を負う気持ちになっていなければなりません。

 企業は人が育つところまでしか成長できません。そして、成長には財政的な下支えの準備も必要です。

 財政的な準備がなければ、いざという時に財政的な制約が、成長を妨げてしまいます。

○ トップマネジメントの役割

 なりたいと思うことに焦点を合わせた行動が必要です。

 しかし、トップマネジメントに変革の意思がなければ、無駄に終わってしまいます。成長のマネジメントとはトップマネジメントの仕事であり、戦略でもあるのです。

○ 変化すべきタイミング

 急成長を遂げてきた小企業や中企業のトップには、部下を自慢するという共通点があります。それでいて、どの部下も準備ができていないと感じるようになっています。これこそが、変化の必要を示す兆候です。

 にもかかわらず、変化すべき時が来ると部下に大きな責任を与えたり、重要な分野を任せたりすることのできない理由を、見つけようとしてしまいます。

 「頑張ってはいるが、任せるにはまだ早すぎる」と言ってしまうことこそ、トップ自身に準備ができていない証拠なのです。

 トップは、自らが名演奏家たりえないことを、肝に銘じておかなければなりません。指揮者となるべきなのです。

 社員全員を知り、顧客全部を知り、起こっていること全てを知り、あらゆる意思決定を行い、あらゆる問題を解決することを誇りにしていたものが、自己目標管理によって、マネジメントしなければならないのです。

 企業は人がつくりあげるものです。

 責任あるトップは、自らの変化を望まないことを自覚したときには、身を引くことが自らと組織に対する責務となるのです。 

 成長のためには、ある段階で自らを変えなければなりません。

 ほとんどの企業が、変化の重圧に負けて挫折してしまいます。いかに成長を望んでいたとしても、機会を逸してしまいます。計画だけがつくられ、お金が垂れ流しとなり、その結果、成果は上がらずに事業が窒息し、成長が挫折します。

 この変化の重圧を無事通り抜けられる企業は、案外少ないのです。