『最大限に連邦型組織を導入し、機能別の活動に分権化の原理を適用することによって組織構造を改革するならば、必ず業績は改善される。』

P.F.ドラッカー,現代の経営【下】第17章
代表取締役 瀧野 雅一

 組織の構造には連邦型組織と機能別組織、2つの組織構造があります。連邦型組織と機能別組織は競合関係ではなく、補完関係にあります。ほとんどの企業がどちらかの原理を使う必要があります。

① 連邦型組織

 連邦型組織は事業活動をそれぞれ自らの市場を持つ独立採算的な事業ごとに組織するもののことです。

○連邦型組織のメリット

❶ビジョンと活動を成果に集中させる ❷安易な事業に力を入れる危険が小さくなる(利益の上がる事業の陰で、利益の上がらない事業を維持する危険が小さくなる) ❸目標管理が成果をあげられるようになる(各事業部門の部門長は、自らの仕事の状況について誰よりも知ることができるようになる) ❹経営管理者の育成において絶大な力を発揮する

○連邦型組織の適用上の原則

❶中央と分権化された単位組織の双方が強力であること ❷単位組織は、自らのマネジメントを維持できるだけの規模を持つこと ❸単位組織は、それ自体が成長の可能性をもつこと ❹単位組織の経営管理者には、広い活動領域と挑戦の機会を与えること ❺単位組織それぞれが、自らの事業、市場、製品を持ち、それぞれが対等の立場に立つこと、互いに競争関係になること

② 機能別組織

 機能別組織は事業プロセスの主要な段階ごとに組織をつくります。連邦型組織を適用できない場合に限って機能別の組織を使います。

○典型的な経理部門

❶財務の機能 ❷記録と保管の機能 ❸情報提供の機能(他の部門が目標管理を行うようにするため) ❹政府の代行事務の機能(所得税・社会保険料の源泉徴収)

○典型的な販売部門

❶販売 ❷市場調査 ❸価格決定 ❹顧客サービス ❺広告 ❻販売促進 ❼製品開発 ❽業界団体との渉外活動

○典型的なエンジニアリング部門

❶基礎研究 ❷製品設計 ❸応用エンジニアリング ❹サービスエンジニアリング ❺工具設計 ❻工場エンジニアリング ❼設備や建物の保守管理(維持管理機能) ❽イノベーションの関わり ❾マーケティングの関わり ❿生産の関わり ⓫固定資産の管理(財務活動の関わり)

○機能別組織の弱み

 事業全体の成果に焦点を合わせることが困難になりがちです。機能別組織の部門長は、自らの部門の機能を最も重要と考えてしまいます。自らの部門の利益のために事業全体の利益を犠牲にするほどではないにしても、少なくとも他の機能別部門の利益を従属させてしまいます。この弊害を避ける有効な対策はありません。なぜならば、それらは機能別組織の部門長が称賛されるような、よりよい仕事を遂行した結果でもあるからです。

 もう一つは、機能についての目標が設定しにくく、成果が測定しにくいことにあります。これは、機能というものが事業の一部の側面にしか関わりをもたず、業績に直接の関わりをもちえないためです。機能別部門の目標は事業の成功という観点ではなく、専門家としての基準に沿って設定されています。

 優れた組織の構造といえども万能ではありません。組織の構造だけが重要な問題であるわけでもありません。しかし、正しい組織の構造は不可欠の土台です。この土台なくしては、マネジメントのいかなる仕事ぶりも成果をもたらすことができません。そして、失敗に終わってしまうのです。