『弱みを無くしたからといって何も生まれはしない。弱みをなくすことにエネルギーを注ぐのではなく、強みを生かすことにエネルギーを費やさなければならない。』

P.F.ドラッカー,経営者の条件 第4章
代表取締役 瀧野 雅一

 成果を得るには活用できる限りの強み、すなわち同僚や上司の強み、そして自らの強みを動員して仕事を行います。強みこそが機会です。組織といえども、人それぞれが持つ弱みを克服することは出来ません。たとえ努力の末に弱みを克服出来たとしても、一流の結果を期待できるまでにはさらに時間と労力を要するでしょう。

 『強みを生かす』ということは、弱みを克服することではなく、できることをもっとできるように、一流を超一流の仕事にしていくということです。

 成果をあげる上で重要なことは出来ないことではなく、出来ることということになります。しかし、人はどうしても出来ないことや弱みに目がいってしまいます。したがって、『強みを生かす』ということは行動だけではなく、仕事をする姿勢でもあります。その姿勢を変えるには「出来ることは何か」と考えることで強みを探し、『強みを生かす』という姿勢を身につけることができるのです。

弱み強み
考える前に行動する行動力がある
言うことが変わる変化に対応できる
意見を曲げない信念を持っている
行動が遅い用心深い
変化に抵抗するルールを守る
情に流される感情が豊か
いつも批判的最上志向
(図)弱みと強みは表裏一体
強みによる人事

 組織には公正さ、仕事には非属人的な公正さが必要です。人に合わせて仕事を構築すると組織は馴れ合いになり、変革の能力を失ってしまいます。

 強みに基づいた人事を行うにはいくつかの原則があります。

1.仕事が適切に設計されているか

 平凡な人が非凡な成果を上げられるように仕事を設計します。組織を評価する基準は天才的な人がいるかどうかではなく、平凡な人でも非凡な成果を上げられるかどうかです。もし、期待した成果を上げられない人がいたならば、その人の仕事振りの作業と手順を見直してみると良いでしょう。

2.その仕事が多くを要求する大きなものか

 仕事で成果を上げるということは、顧客あるいは上司から要求されたものをその通りに行うということではなく、結果的に顧客に満足して頂いたかどうかです。「指示通りにやったがうまくいかなかった。」と返事が返ってくるのは仕事を小さく設計している可能性があります。要求されることは状況により変化するし、しかも突然変化します。仕事は大きく且つ多くを要求するものとして設計した場合にのみ、変化した状況と新しい要求に応えることができるのです。

3.その人にできる仕事か

 人事においては、そもそもその人にできることからスタートしなければなりません。オーケストラの指揮者は、いかに優秀なバイオリニストであってもトランペットの欠員の補充として採用したりはしません。成果を上げられなかった時は人事の失敗と言わざるを得ないのです。

4.弱みを我慢できるか

 その人の強みを生かそうとすれば、弱みは我慢しなければなりません。人は誰でも強みと共に弱みも持っています。手だけを雇うことは出来ないのです。

 人事において重要なことは弱みを最小限度に抑えることではなく、強みを最大限に発揮させることにあるのです。

 次回は、『最も重要なことに集中する』についてお話します。