『マネジメントの人間を方向づけるものは、上司ではなく仕事そのものでなければならない。』
P.F.ドラッカー,(引用元:マネジメント【中】第32章)

マネジメントが成果を上げるためには、仕事を会社の目的に必要な課題を中心に組み立てなければなりません。できることならば、評価測定のできるものがいいでしょう。
○職務設計の間違い
マネジメントの仕事に関して、正しい職務設計を保証する公式はありません。しかし、マネジメントの働きを妨げる間違いを知り、それを避けることは可能です。
①昇進を目標にすること
仕事の喜びが昇進であったのでは、仕事の意味がなくなります。なぜなら、昇進できるのはせいぜい、10人に2人か3人だからです。
多くの働く人が、そのままの階層にとどまります。昇進できた人の肩書きは立派なものになり、報酬も増えるかもしれませんが、行うべき仕事はそれほど変化しないこともあります。それどころが、昇進できなかった人を部下に持ち、その人たちと一緒に仕事をしなければなりません。
したがって、仕事は全て、成果を通じて喜びを与えるものである必要があります。挑戦的であったり、報われるものでなければなりません。重視するのは現実の仕事であって、次の仕事ではないのです。
②補佐役の仕事
マネジメントの仕事には目的、目標、役割がなければなりません。つまり、明確な貢献ができるものでなければならず、責任ある存在とならなければなりません。ところが、補佐の役には直接貢献することがありません。自分だけでは責任ある存在とはならないのです。補佐の役は上司が必要とすることや、上司への売り込みに成功したことをするにすぎません。
③マネジメントが自分の仕事を持たないこと
マネジメントは仕事です。マネジメントの人間はマネジメントの仕事と自分の仕事の二つからなります。マネジメントの人間はマネジメント兼専門家です。十分な仕事がないとき、部下の仕事を奪ってしまいます。「権限を委譲してくれない」との苦情のほとんどは、上司が十分な仕事を持たず、部下の仕事を奪うことによって生じます。したがって、マネジメントは単なる調整役ではなく、自らも仕事をするプレイング・マネジャーでなければならないのです。
④不可能な仕事
実績のある者が2人続けて失敗する仕事が不可能な仕事です。そのような仕事は内容を再構築しなければなりません。後になってみれば、どこが悪かったのも明らかになってきます。
○仕事と個性
仕事は人が行います。したがって、仕事を人に合わせ、人のニーズに応え、人の期待に沿うものとして設計します。他方、組織構造は人中心ではなく、仕事中心でなければならないことも明らかです。さもなければ、継続性は失われ、仕事の引き継ぎは不可能になってしまいます。仕事を人中心に設計すれば、人事異動の都度、仕事の再構築が必要になってしまいます。
仕事は、なされるべき課題からスタートして設計します。しかし同時に、どのような気質の者であってもこなせるよう、設計しなければならないのです。適材適所ではなく、適所適材なのです。