『人事に完全無欠はありえない。限りなく10割に近づけることはできる。』
P.F.ドラッカー,(引用元:チェンジリーダーの条件Part4第4章)

マネジメントは、人事に時間をとられます。というより、そうでなければなりません。なぜなら、人事は長期的に影響し、かつ、元に戻すことも難しい意思決定だからです。人事に完璧な人はいませんが、卓越した人はいます。人事にはいくつかの原則と、手順によって行う必要があります。
○人事の原則
①ある仕事につけた人が成果をあげられないときは、人事を行なった人の間違い
②責任感のある人が成果をあげられるようにすることは、マネジメントの責任
③外部からスカウトしてきた人に、初めから新しい大きな仕事を与えない
④スペシャリストはいない(稀にいるかもしれないが、滅多にいない)
⑤その人の弱みが業務上で影響がないのであれば、無視をする、あるいは我慢をする
⑥好き嫌いで決めない
⑦過去によく出来た仕事ぶりを見る
○踏むべき手順
①3人から5人程度、複数の候補者の中から検討する
②強み(できること)を中心に検討する
④一緒に仕事をしたことのある何人かに考えを聞く
⑤仕事の中身を理解させる
(新しいポストに就いてから3ヶ月後くらいに、「新しいポストで成功するには何をしたらいいですか?」と聞いてみる)
昇進人事における失敗の最大の原因は、人事を行った人が、『新しい仕事が要求するものについて考えること』を怠ることにあります。ポストに就いた人にも、そのことを考えさせないことにあります。
○人事に失敗したらどうするか
これらのプロセスを全て踏んだとしても、人事の失敗が無くなるわけではありません。特に、研究所・技術部門・法務部、あるいは資格を必要とする仕事に就いている人など、専門分野の人事にはリスクが伴います。専門家はその専門領域で一流でない人を上司として受け入れようとしない傾向があります。そのために、技術部長は技術部の中から、選ぼうとします。しかし、技術者としての能力と、技術部長としての能力は別物です。
また、新しい環境に向いているかどうかを事前に知る方法はありません。したがって、昇進や異動がうまくいかなかったときには、ただちに再異動させる必要があります。「私が間違った」、「直すのは私の責任だ」と考えなければなりません。間違って人事をされてしまった人を、そのままにしておくことは意地悪です。妥当な解決策は以前のポスト、あるいはそれに相当するポストに戻すことです。
組織で働く人は他の人がどのように報われているかを見て、自らの態度と行動を決めようとします。仕事より追従のうまい人が昇進するようであれば、組織そのものが業績のあがらない追従の世界となっていきます。公正な人事のために全力を尽くさないトップマネジメントは、業績を損なうリスクを冒すだけでなく、組織そのものへの敬意を損なう危険を冒していることになるのです。